商品が定番になる難しさと、ペリカンのパンが好きな理由

どこに行く為の飛行機だったか覚えがない。
機内に着席してすぐ機内紙に目を通していたら
浅草の老舗のパン屋さん『ペリカン』の特集があった。

1942年から続く老舗ベーカリー『ペリカン』の4代目のお話。

アトリエがある台東区では「ペリカンのパン使っています」という看板がある喫茶店と
「開花楼」と書かれた麺の木箱が店先に置いてあるラーメン屋さんをよく見かける。
そしてそれは、味に間違いなし。という安心にもなっている。

ペリカンのパンは食パンとロールパンのみ。
食パンはやや小ぶりで、もっちりとした食感とほんのりと甘い味。
夕食に食べても他の料理を妨げることがない。だけど美味しい。

さて、その特集というのは4代目の社長が、ペリカン歴代初の製菓学校に通ったことや、作っている種類の少なさなど、
細かい取材のもとに丁寧に書かれていた。

そして、機内で泣いた。

その頃ちょうど、父のお店のことも気にかけていた時で(詳しくはこちら)私の好きなもの お肉編 
長年、同じものを提供することの難しさを日々考えていたタイミングだった。

バッグブランドを始めて以来ずっと、半年に一度のペースでコレクションを発表していると
そんなに毎回新作を作る必要はあるだろうか、って自分についても考えていた。
目新しさだけではなく、もっと長く愛されるような、定番と呼ばれる商品を作るにはどうしたら良いかな
と思っていた時。

定番って、自分から定番になるようにと思いを込めて意気込むこともありますが、実際には自分で決めることじゃない。
使ってくれる方が、これは使いやすいと評価をしていただいたり
デザインが普遍で違和感なく時代に合っていたりと、様々な要素が重なって定番になるものだ。

ブランドのアイコンとなるバッグ、コケットでいうとCubicが良い例なのですが
実はマイナーチェンジを4回ほどしています。
持ち手の握った感じや、携帯のサイズが変わってきたので内ポケットの大きさを変えたり、より使いやすくなるよう
いくつか仕様を変えている。
色展開もそう。たまに新しい色を加えたりもしている。

ペリカンのパンは、ずっと変わっていないように見えるが、本当は時代に合わせてレシピを何度も変えていた。
父のステーキ店のソースも、ソースのレシピを何度も変えているらしい。
50年前と今ではお肉の流通が良くなったことや、脂身が少ない肉質が好まれるようになり、素材のお肉が変わったからだと言っていた。

変わらないように見えるものって、実は変えていかないと、味が変わったと思われることが多々ある。

生活が変われば味覚も変わるわけだし、その時は手に入れやすかったのに価格が高騰して手に入れられないことだってある。
生産者が廃業してしまう場合があれば、代品に合わせて配合を変えることだってあるだろう。

何より美味しさの基準が時代で変わる。


変化しないために、変化し続けなければない。
変化を恐れていると、同じものを作り続けることができない。
そして、変化することを苦しんでいてはいけない、笑顔になることを作っているんだから。

そう、ぼんやり感じていたことが、その記事によって後押しをしてもらったように思えたんだと思う、多分。

ペリカンがある生活、日常や特別な日、身近に好きなものがある生活。
コケットのバッグは、そういう存在になりたいと思っている。

ペリカンのパンを食べると、今でもあの時記事を読んだことを思い出す。
そして、少し背筋が伸びるんです。