最近、日本製について思うこと - Coquette Online Shop

最近、日本製について思うこと

テーマがまちまちな更新ですが
デザイナーの思いつくままのブログ、どうぞお付き合いくださいませ。

今回は日本製について。

日本でモノを作ることが困難になってきています、というお話。
もう、これはかなり深刻な内容なので、ちょっと長くなると思います。
飲みながら話したい(笑)

コケットの商品は日本で作っています。

デザイン、素材やさん、縫製の会社(メーカー)や職人さん。
コケットのバッグができる工程は、大きく3つの分野に分かれます。
アトリエでデザインをして、革や資材を揃え、それを形にする縫製のメーカーさんや職人さん。
それぞれが更に細分化されて、1本のバッグを作る為にざっくり7,8社、多いと10社以上が関わります。
意外と多いんですよ。

さて、日本製って何をもって日本なのか。
そして日本であるべきことは何なのか。
最近とっても考える重いテーマです。

物作りの現場は高齢化が進んでいます。バッグの世界も同様です。
昔からの腕の良い職人さんには後継者がなく、このコロナで追い討ちをかけてしまいました。
思い切って廃業の決断をされる方が増えました。
悲しいことですが現実です。

では、他の国はどうなのか。
随分前に、中国などアジア諸国に工場や職人さんが流出してしまった時期があったそうです。
その結果、バッグに限ったことではありませんが、最近ではベトナム、マレーシア、インドネシアなどで作られることが増えました。
皆さんもタグを見たことがあるかもしれませんね。

そういった国々は高齢化問題の話は聞こえてきません。
働き手がたくさんいて、皆誇りを持って職人として働いているからだと思います。

海外生産は、早く大量に作ることができ、コストを抑えることができました。ですが今は人件費も上がり、安さを最重要としていた企業さんは、更に安さを求めて新しいエリアを発掘しています。そうこうするうちにハイブランドのバッグも、本物かと見間違うほど完璧に真似出来る技術を習得している国があるのも現実です。

日本のお家芸だった手仕事の細かい革小物の技術は、今では作る人が少なくなり、技術が継承されていないため作れないバッグも多々ある、という具合です。

デザイナー仲間でも日本で生産はせず、本人が日本人であるという事を謳って海外で作っている人もいます。
Designed by JAPAN.
これに関して特に異論はありません。
日本以外で作ることも選択肢の一つ。

日本製だから物が良い、という日本製神話はもう過去の栄光だとわかっています。

勿論リスペクトしていますよ。先人たちが作り上げた土壌で私たちも作れているわけですから。

どこで作るかが問題ではなく、コスト面や、より良いものを作ることができるところを探した結果、海外だった。という理由もあるはず。
この考えは更に加速していくと思います。

ではコケットはどうなのか、これからどうするべきか。

コケットは可能な限り日本で作りたいと思っています。
美しいとお互いが思える物作りの姿勢やこだわりを、膝を突き合わせ、長年日本で暮らした者同士が、日本語で話すからこそ共有できることがあると思っているからです。
それは、ブランドを始めた当初、革の工場さんで試作ができた瞬間の感動があったことが大きいと思います。
梅雨時に雨に濡れた葉っぱのあの感じ、とか、夏の季節の空の色、とか。
何気ない例えが、はいこれですと画像を見せるだけではない感覚の伝え方があるのではないかなと。
革の工場さんのお話ですが、縫製に関しても同じ感覚で商品の表現があると思っています。


コケットは自社内に職人がいないので(これはあえてそうしています)
いわゆる外注でメーカーさんや職人さんに作ってもらっています。

ここ10年程、廃業する縫製のメーカーさんを目の当たりにして、強く意識し始めたことがあります。
小さいながらもブランドを継続することは、自分だけではなく関わってくれる方々に、少しでもお仕事を作ることになるのではないか、
デザイナーとして日本で作る意味ってそういうことでもあるんじゃないか。
そう思うようになりました。

ただ、葛藤があります。
日本で作ると高い。
日本で作ると高いのは人件費です。
では、それなりの綺麗さが保たれているか。
問題はそこです。
(革の工場さんと縫製の工場さん、2つの日本製の話が混在していますが、ここでは後者の方)

悲しいけれど必ずしもそうとはいえない時があります。

高い ≠ 綺麗

全部ではありません。
18年間、綺麗に仕上がる工場さんを求めていくつも渡り歩いてきましたので。
ここでいう問題は、出来栄えの良さや美しさの基準が、共有できているか、です。

仕上がりの美しさ。
このステッチの綺麗さは譲れないとか、この部分のシワは気になる、とか。
コケットの商品として自信を持って、お客さまのところに行ってこい!と送り出せるかどうか。

コケットの検品は厳しいと思います。
メーカーさんと出来上がりの合格点や注意点を目合わせしていく作業のしんどさ。
これはないかなーってダメ出しをするのって本当は嫌ですもん。気が重い。
せっかく作ってダメだって言われる方も嫌ですよね。

ですが、コケット基準を知ってもらって、ブランドとして美しさの基準を理解し合える人とでないと良い商品を作れないです。
だって、お金を使ってバッグ買ってもらっているんですから。

この程度の○○、うちだとオッケーにしてもらってます、とか言われます。たまーに。
次回の生産時に気をつけるようにしますね、とかならまだ良い。
次回からは引き受けられません。と逆に生産を断られることもあります。

重箱の隅をつつくようなことは、決してしていないのですがね、、、。

一度美しさの基準を妥協すると、それ以降の基準は甘くなるものです。
これならまぁいいか、とか、作ってくれなくなるならしょうがないこの程度は、など、妥協点の話しをしたいのではないのですよ、本当は。
ここをもっとこうすると綺麗に仕上がる、とか、そのために芯材を変えたほうが良いですよという提案とか、この形がうまくできる職人を毎回同じと決めて生産しますよ、とか、そういうお話をしたいのです。

コスト面では日々闘いです。もちろん価格据え置きの企業努力も必要です。
だけど価格(コスト)では片付けられない、日本で作る意味、って
美しさの基準が同じ視点だったり、それを追求する姿勢だったりだと思うのです。

なんでしょうね、それがだんだん難しくなってきている。

コケットは、先にも書きましたが、できる限り日本で作りたいと思っています。
そういった場所が提供できるなら作りたい。
ですがその前に、綺麗なもの、美しいものを
「それは外せないよね!」と、同じように思える人とこれからもバッグを作って行きたい。

 

日本製って、難しくなっています、という少し複雑なお話でした。
飲んでないですよ(笑)

 

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