朝からずっと雨。こんな日はブログを書くのに良いですね。
今日は「オリジナルの素材」(2021年 6月 12日更新)の続きを書こうと思います。
デザイナーズビレッジの鈴木村長に紹介してもらい訪ねたのは墨田キール。キールはフランス語で革の意味。墨田は墨田区にあるから。
社長に革のサンプルを作りたいと話すや否や、すぐに立ち上がり4階に行きましょうと、外階段を登って屋上の秘密基地のような作業部屋に行きました。
「三木さん、この人がサンプル作りたいんだってー」
え?え?作ってくれるの?? 三木さん、三木さんが作ってくれるの?
あとはこの人に詳しく話してみて、とだけ言って立ち去る社長。
キツネにつままれたような面持ちだったであろう私に、三木さん
「どんなのが作りたいんだって?」と無表情です。
怖そう、The職人って感じ。
内心びくびくしながら
ベージュをベースに干渉パールのグリーンを効かせて、赤みのグリッターパールも入れて、赤でチラチラと点在させるような革。出来上がりのイメージは淡いグリーン。それと、、もう1色、、、。
面倒だったと思います。色んな意味で(笑)
干渉パールは例えると真珠のような輝きのあるパールで、グリッターパールは大粒で表面にチカチカした輝きを与えるパールです。グリーンベースにグリーンの干渉パールを入れると濃いグリーンになるので、あえてベースはベージュ色にして、干渉パールが同化しないようにし、赤のグリッターはグリーンと反対色なので、より点在の存在が増すように考えた色。
めんどくさいな〜と言いながら、ずらりと並んだ一斗缶から顔料などの色材とパールを混ぜて撹拌して、コンプレッサーを差し込むと革にシュシュっと吹き付けて、私にその革をほいっと渡してくれました。その間数分のできごと。
えーーー!びっくり!イメージ通りです。
今でもあの感動ははっきり覚えています。
サンプルを作ってもらえるところが見つかったとしても、実はそこからの大変さも覚悟していました。
色を作るってとても感覚的な仕事です。世の中に無いものを作ろうとしているのだから、これです、と言えるものが無いわけです。出来上がりのイメージが共有できないとゴールできない色の感覚。
ですが、口頭で伝えただけのイメージで、思い描いていた色が目の前に出来ている。
会社員時代に何度もこの調色という作業の難しさを体験してきた私でしたが 一発でこれ!という色が出せる職人さんに巡り会えた感動たるや。
見つけた!!と心の中でガッツポーズです。
オリジナルの革が誕生した瞬間でした。
その革には更にペイズリーの型押しと、丸いパンチングを施し、とても複雑で手の込んだ加工の革が出来上がります。その2ヶ月後この革でトートを作り展示会にお披露目しました。
あれから18年。墨田キールさんとは、もうすっかり長いおつきあいになりました。数々のバッグも作ってきたので革の仕入れ先は広がりましたが、今でも作りたい革があると墨田キールさんを頼っています。
そして4階を訪ねて帰る時、職人の三木さんとは
「また来まーす」
「もう来なくていいよ」
と挨拶を交わすのです。三木さん怒っていませんからご安心を。
以前「colocal コロカル」でも詳しく取材していただいたことがありますので、ぜひこちらもご覧ください。