オリジナルってどこまでの範囲?

ここ数日続いていた雨も止みました。お盆の休みをたんまり頂いたので元気です。

干渉パールとグリッターパールと型押しとパンチングの革(2021年7月2日更新)では墨田キールさん(工場さん)にて、コケット初めての展示会出展でお披露目した革ができるまでをお話しさせてもらいました。

そもそもオリジナルの革ってどんなことを言うのか?
今日はそれについてお話をしようと思います。

主にコケットでは牛革の表面に様々な加工をすることが多いです。と言うのも女性向けのバッグをメインにデザインしているので、女性が持つ華やかな革商品を作るため、と言うのが大きい理由。

では、加工って?

工場の墨田キールさんにお話を戻しますと、こちらの工場さんは主に染色をメインになさっていました。大きなタイコと呼ばれる樽に染料と下地と言われる革を入れて、グルングルン回して革の芯から染めるのです。芯というのは革の後ろを見てもらうとわかります。革の表の色に似た色であればそれは芯を染めています。白っぽい色であればそれは表面だけが染まっている、もしくは顔料で表面を吹き付けている革であることが多いです。

昔はカメラを買うと革製のカメラケースを一緒に揃える方が多かったそうで、それはもう革業界が大繁盛していた時代があったとか。

さて、現在墨田キールさんは染めではなく表面の加工を多くなさっています。

型押し、箔押し、吹き付け、色止め、など。
型押しも箔押しも大きな機械で何トンという圧をかけて革に押すのです。

型押しは墨田キールさんが持っているたくさんの版の中から選ばせてもらって、革に押すことを言います。刻印みたいと言うとわかりやすいですね。
そもそも工場にある版を使わせてもらうわけなので、オリジナルとは言いにくい。

ですが、下地の革の色、箔の色、版、その後に更に色を重ねるなど、どれを選ぶか、色、重ねる順番など無限に組み合わせがありますので、世の中に無い加工ができる。
こうしてできた世の中に流通していない革をオリジナルの革と呼んでいます。

コケットでブランド立ち上げ当初に作ったフルールというシリーズの革があります。イタリアで買い付けたお花の版をお持ちだった墨田キールさん。ヨーロッパの壁紙みたいなお花模様の型押しを探していたコケット。
版の見本帳からこの型押しを見つけました。聞くとイタリアで買ってきたは良いがこれをどのように使えば良いのか思いつかず、日本で一度も使用したことも無く数年ほったらかしだったとか。

この型、使わせてください!即答です。
こうしてフルールという型押しのシリーズが生まれました。

ただし、単純ではないところがコケットの加工。依頼したのはこうです。

1.牛革の下地の表面を濃い茶に吹き付けて仕上げてもらいます(色を調色してもらう→これも立派なオリジナル)

2.箔を貼る前の下処理をして箔を全体に貼ります。

3.シャンパンゴールドの箔を全体に貼ります(たくさんある箔から色を選びます)

4.お花の型を押します。

5.型押しでできたお花の盛り上がり(凸部分)だけ箔を落としてもらい、下に塗布した濃茶を浮き出させます。

6.色止めをして仕上げます。

機械を使う部分はありますが、この1から6は全て職人さん達の仕事によるものです。特に1と5は手作業になりますので、調色加減や箔の落とし加減によって色の出方が違い、裁断する場所でも柄や色も様子が変わるのです。

ふたつと同じ物がないのも面白いところ。

このフルール革を作り始めて随分経ったある日、墨田キールの社長がぽつりと仰ったことがありました。

お財布を持って工場さんにやってきたとある企業さん。それはこのフルール革で作ったコケットののお財布でした。そしてこれと全く同じ革を作って欲しいと言ったそうです(!)

社長はその時、この型は確かにうちの物だけど、この加工の組み合わせこそがコケットさんのデザイン。だから同じ加工は引き受けられないと断ってくれたそう。

型を持っているのは墨田キールさんです。そもそもコケットにはこの版を買い取らない限り私以外に使わないでくださいという権利はありません。もし単純に革に押すだけならお引き受けなさったと思います(こういうのは素押しと言います)

あとでそんな事があったのかと知った時、本当に嬉しかった。

コケットの革、オリジナルというのはこんな革たちです。

写真は、フルールの型。こんな大きくて100kg位あるんです。

 

追伸

コケットではその時々で、デザインに合った革を使用しています。工場さんが所有している版を使用することが多いのですが、版も自社で作成して型押し革を作る場合もあります。
また、革屋さんで仕入れられる革を使用することもあります。